調剤薬局業界においてM&Aはもはや珍しいことではありません。しかし実際のところ、まだ「買収」「売却(譲渡)」の経験は無いという経営者様は多くいらっしゃいます。これからの経営戦略の参考になるよう、ここではM&Aにまつわる様々な疑問を解消していきます。
はじめに、M&Aと一口に言っても様々な方法がありますが、基本的なパターンは「株式譲渡」と「事業譲渡」です。
では、それぞれで従業員の雇用契約はどのような対応になるのでしょうか?
・「株式譲渡」
会社そのものを買収または売却するため、基本的には従業員の雇用も、その権利義務としてそのまま引継がれる。職員一人ひとりと雇用契約書を再度取交す必要は無くスムーズな引継ぎが可能。
もちろん、M&A後も残って新しい会社で働くかどうかは従業員の意思による。
・「事業譲渡」
事業(店舗)を買収または売却すること。店舗の運営会社(開設者)が変更となる。雇用契約などの権利義務は当然には移転せず、譲渡側と譲受側との間で合意が必要となる。職員がそのまま残って新しい会社で働く場合には、雇用契約の変更が必要。
もちろん、M&A後も残って新しい会社で働くかどうかは従業員の意思による。
■雇用契約の変更方法としては以下2点
(1)旧会社を退職し、新会社で新たに雇用される
(2)雇用契約上の地位を新会社が引き継ぐ
ほとんどの場合、(1)が選択されます。
なぜなら、譲渡側(旧会社)が抱える債務、例えば、従業員に対する未払残業代などの潜在的債務などを承継してしまうリスクを抑え、雇用契約上のトラブルに巻き込まれないようにするためです。
「事業譲渡」では雇用契約などの権利義務は当然には移転せず、まずは譲渡側と譲受側との間で合意が必要となると記載しました。
しかし、従業員からしてみれば、その合意の結果、「突然、雇用主が変わる」「突然、仕事が変わる」「突然、仕事が無くなる」というようなことになります。法律的に問題はないのでしょうか?
(1)従業員に現在の会社に残りたいと言われた場合
従業員には新しい会社に移るか現在の会社に残るのかを選択する権利があるため、いくら譲受側(新しい会社)が従業員を引き継ぎたいと言っても、無理に移動させることはできません。しかし、譲渡側(現在の会社)にとっても店舗整理など事業縮小により人員の削減を目的としている場合があるかもしれません。そういった理由により解雇することになると、結局「整理解雇の問題」として考えられてしまい、あまりお勧めはできません。
また、逆にこういうこともあるかもしれません。
(2)承継予定ではない従業員から、譲受側(新しい会社)へ移り引き続き同店舗で働きたいと言われた場合
いくら従業員の意思があったとしても、事業譲渡では、譲渡側と譲受側との間で従業員(全員または一部)の承継に関する合意がなければ「その通り承継はなされない」ということが原則となります。
但し、その従業員を承継しないことが、不当労働行為や公序良俗違反に該当しないかどうかは注意が必要です。
最後に、
(3)労働条件をそのまま引継ぐ必要があるか?
法律的には、必ずしも労働条件が引き継がれる必要はないようです(裁判例でも否定されているケースが多い)。
たとえば、譲受側としては、従業員の労働条件を統一する必要がある場合も多いでしょう。
しかし、その就業規則や労働条件の変更が、従業員にとって不利益になるものであっては、「就業規則の不利益変更の問題」「労働協約の問題」が生じるため、注意が必要です。
まとめると、従業員の雇用については、譲渡企業、譲受企業、対象の従業員それぞれの合意によって決まるということです。
もし、従業員に対して「現在の会社を辞めてもらう必要がある」「現在勤務している店舗に残れない(承継できない)」「雇用条件を変更する」という選択になった場合は、真摯な態度で丁寧に告知を行い(これが大事)、従業員の方が決断し次のステージへ進むための十分な期間を設けてあげる必要があるでしょう。
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