大型病院の門前には調剤薬局が乱立、この様相が近年では少しずつ変化しています。病床を持たないクリニック門前薬局からすれば喉から手が出るほど羨ましいと思えた大型病院門前薬局ですが、淘汰の波が迫っています。そこから見える状況を整理し、今後の薬局業界を考えます。
今日の日本では医薬分業が促進され、全国平均では7割を超えてきています。薬品の専門家である薬剤師が医師の処方をダブルチェックするという立場で進んできた医薬分業ですが、同時に問題点も表面化してきました。その中の一つが患者の利便性についてです。特に議論にあがったのは高齢者や車椅子を利用する患者です。このような方々の利便性を確保する必要性から2016年3月31日に通知改正、2016年10月1日から適用されたのが、一般に言われる規制緩和=敷地内薬局の流れとなるわけです。
しかしながら、国としても敷地内薬局を積極的に推進しているわけではありません。2018年度診療報酬改定においては特別調剤基本料10点が設定され、いわゆる敷地内薬局に対しての基本料算定においては他の基本料から比較して、かなり厳しい内容だといえます。
とはいえ、大手チェーンをはじめとし、敷地内薬局への取組は各社、非常に意欲的です。
理由は
・立地勝負の薬局事業でおおきなアドバンテージ(処方箋)を確保できる
・クリニックに比べ高度薬学管理が必要な患者が多く処方箋単価が高い
・病院とのコネクションができる
などでしょうか。
今後も敷地内薬局は増加することが見込まれます。
前項で触れましたが、規制緩和によって敷地内薬局が誘致されることは、立地勝負である調剤薬局運営にとって、病院門前薬局は死活問題です。大学病院のような大型病院の門前には調剤薬局が6軒、7軒存在するとういのは珍しい光景ではないですが、1軒の敷地内薬局誘致でこの光景がさまがわりするのは容易に想像できます。おそらく生き残れるのは2,3軒がいいところでしょう。存続が出来たとしても、処方箋は大きく落ち込み運営方針の大幅な転換が必要となります。
また、昨今の病院門前薬局のリスクは敷地内薬局誘致だけではありません。
以下に考えられる要因を列挙してみます。
・薬価差益の圧縮
・病院自体の患者数減少
・賃料の高さ
・基本料の締め付け強化(病院云々ではないですが・・)
もともと薬剤料比率の高い病院門前薬局では近年の薬価差益圧縮は大きな打撃です。仮に売上3億円×薬剤量比率8割×1%の薬価差圧縮で、240万円の減益です。首都圏の一部エリアを除けば患者は減少傾向ですし、基本料の低下(特に全国チェーン大手)で減収のところに、賃料設定が高い病院門前の固定費はばかになりません。病院門前薬局は厳しい環境で、岐路に立たされていると言っても過言ではなさそうです。
ここまでの話は大型の病院に付随する薬局の話でした。では、病床を持たないクリニック門前薬局には全く無関係の話なのでしょうか?決してそうではないと思います。厚生労働省が策定した
患者のための薬局ビジョン である
~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~
は今後の薬局運営の方向性の根幹といって間違いないでしょう。
既にご存知だと思いますが、この中では『かかりつけ薬剤師・薬局』が国が示す方向性を担ってきます。その為、かかりつけ薬剤師の確保や健康サポート薬局への対応が必須と言えます。それを反映させているのが調剤報酬改定というわけです。医療費の削減の声が強まるなかで、今後は小規模運営の薬局にも改革の波は押し寄せてきます。敷地内薬局が病床を持たないクリニックで誘致されることは無いでしょうが、今後の改定では本規制緩和に匹敵するようなインパクトのある内容になることは、そう遠い先では無いのかと思います。
冒頭に述べましたが、医薬分業が叫ばれている時代には病院門前薬局は安定した運営ができる。と多くの方が考えていたでしょう。その当時に、誰がこの敷地内薬局誘致の流れを想定出来たでしょうか?
薬局業界の変革は既に始まっています。
貴社の運営方針は固まっているでしょうか?
また、その方向性は国の方針に沿った内容で、今後を見据えたものでしょうか?
淘汰の波に飲み込まれないような、確固たる経営方針が必要な時代だと強く感じます。
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