薬局の業務に関してはエキスパートでも、数字のこととなると苦手な経営者も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。今回はとても簡単な損益分岐点の分析方法、CVP分析の基本的な使い方について紹介していきます。
CVP分析とは「コスト」(Cost)と「販売量」(Volume)と「利益」(Profit)の関係から、製品を何個販売すると、原価がどれだけかかり、利益を明らかにするための分析をCVP分析といいます。
薬局の場合、製品の販売量は処方箋の受付枚数、原価は薬剤料や消耗品費など言い換えることができます。CVP分析によって損益分岐点を越えるために必要な売上高、目標利益を達成するために必要な売上高などを計算することができます。
CVP分析というと、とても難しいように聞こえますが、実際には小学生の算数の知識で理解することができます。では早速、CVP分析の具体的な使い方を説明していきます。
まずは損益分岐点の計算方法から説明していきます。損益分岐点とは、営業利益がちょうどゼロになるときの売上高を指します。計算式は以下の通りです。
売上高から原価を引いてゼロになる金額が損益分岐点となります。ここでいう原価は「変動費+固定費」です。
変動費は販売量に比例して発生する費用を、固定費は、人件費、水道光熱費、減価償却費、など販売量に関係なく発生する費用のことです。薬局で考えるのならば、変動費は薬剤料や消耗品費、固定費はリース料や薬局の賃料なども含まれてきます。
ここで、以下のような薬局を仮定します。
※一ヶ月あたりの損益分岐点を計算。
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売上
処方箋単価 6,000円
原価
変動費
薬剤料 4,400円(薬価差益10%と仮定)
消耗品費 40円
変動費合計 4,440円
固定費
人件費 500,000円
賃貸料 120,000円
リース料 100,000円
水道光熱費 30,000円
諸経費 50,000円(会費・税理士顧問料等)
固定費合計 800,000円
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まずは売上高と変動費の関係を考えてみましょう。
ここに薬価差益を加えると、
これで処方箋一枚あたりの利益が2,000円だということが分かりました。今計算した売上高から変動費を控除した金額を、貢献利益または限界利益といいます。
損益分岐点は売上高から原価を引いた金額がゼロになる売上高を指します。「原価=変動費+固定費」なので、まだ固定費について考慮されていません。固定費は先ほどの条件を参考にします。損益分岐点の計算方法は以下のようになります。
処方箋枚数をX枚とすると
上記の式より、今回の条件の薬局の損益分岐点を越えるためには、1ヶ月あたり400枚の処方箋が必要ということが分かりました。売上に換算すると240万円です。
まとめると以下の通りです。
前のトピックスで、ある薬局の損益分岐点の金額が分かりました。しかし、実際の経営では営業利益0円で良いはずがなく、目標としている利益があるはずです。
次に目標の利益を目指すために必要な処方箋枚数を計算してみましょう。先ほどの「損益分岐点の計算方法」で使った式、「営業利益=貢献利益-固定費」を利用すれば簡単に目標利益を求めることができます。損益分岐点の計算では営業利益をゼロとして計算しましたが、今回は目標利益を計算します。よって、営業利益の数字を目標利益額にすれば計算ができます。
目標利益を40万円/月、必要な処方箋枚数をXとしたとき、計算式は以下の通りです。
よって、毎月40万円の営業利益を出すには、600枚の処方箋、売上高は360万円必要になります。
変動費と固定費、処方箋単価さえ分かっていれば、目標の利益までどのくらいの処方箋が必要になるかが見えてきます。CVP分析の最も初歩的な説明だったので、理解することも難しくはないと思います。このCVP分析は他にも、目標とする営業利益率の計算をしたり、目標利益を達成するために経費をどれだけ削減すれば良いかの計算をしたりなど、幅広く利用することができますが、次の機会に改めて説明いたします。
薬局を運営していく中で、薬剤師としてのスキルと合わせて経営者としての視点も必要です。今回紹介したCVP分析を利用することで、短期的な予算計画や目標を立てることができます。そして更に大切なことが、結果を振り返ることです。今回紹介したCVP分析を利用し具体的な計画を立て、薬局の経営に役立ててみてください。
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